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ってなに?

未来のまちづくりを共に。活動の振り返りから導いた、空き家活用ステートメント

プロジェクト① 空き家があるまちの未来

2019.12.20
未来のまちづくりを共に。
活動の振り返りから導いた、空き家活用ステートメント

関西という地域に密着しビジネスを行う企業として、さまざまな社会課題の解決への糸口を探るためのプロジェクト「コ・アップデート・関西」に取り組み始めたオプテージ。最初のテーマを「空き家があるまちの未来」とし、関西各地で空き家・空きスペースの活用に取り組む人々と対話を重ねてきました。

現在、人口減少時代を迎える日本において、空き家の増加は大きな社会課題となっています。居住者・管理者不在になった物件が、景観や治安の悪化、火災発生などを招く懸念があるためです。2025年には住宅の3分の1が空き家になると予想されており、各自治体が対策を講じていますが、所有者からの許可の取得や取り壊す際の費用の問題、更地にするより建物を放置する方が固定資産税が少なくてすむなど税制面の影響もあり、難航しているのが現状です。

オプテージも空き家の増加を課題と捉えてリサーチ活動を始めましたが、取材で出会ったのは、空き家を「地域活性化に向けた、活用の場」とポジティブに捉え、活動している方ばかりでした。そこで、ここまでの活動を振り返り、今後どのように取り組みを進めるべきか整理するワークショップを行いました。

(参加者/オプテージ 霜野、下田平、辻、堀田、田中、宇田)

これまでの取材を通して得た知見を、プロジェクトチームで共有

ワークショップは、これまでの取材の振り返りから始まりました。

取材したメンバーが各事例の関与者の説明、活動内容の発表を行い、ワークショップに集まったプロジェクトメンバー全員に共有。聞いているプロジェクトメンバーからの質問で議論が膨らんでいきます。

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取材で話を聞いた方々の言葉を引用しながら、取り組みへのスタンスの違いや共通点を紹介

振り返りの対象としたのは、この半年余りの間に霜野・下田平が現地に赴き、取材した4つの事例です。

<知るフェーズ>

空き家をポジティブに語る!ここから始まる人口減少時代のまちづくり

研究者でありながら、実践者としても地域の方々と空き家問題の解決に取り組む、首都大学東京教授・饗庭伸さんに人口減少時代の空き家について話を伺いました。空き家をポジティブに捉え、まちを未来へ繋いでいくための方法を探るインタビュー。

<聞くフェーズ>

地域のママたちとの共創。オプテージが摂津市で始めた「空き家プロジェクト」

大阪府摂津市を中心に、ママのためのサークル活動を行うマミー・クリスタル。ベッドタウンに生きるママたちが「自分らしく輝ける」場所をつくることで、愛着を持ち続けられるまちづくりに取り組む模様を取材しました。

行政と住民が一体となって取り組むニュータウン再生プロジェクト

大阪府堺市に位置する泉北ニュータウン。世代交代と人口減少が進むニュータウンにおいて、スクラップ&ビルドの再構築ではなく、空いたスペースの利用方法の模索といったソフト面から、まちの再生を図っています。そのまちづくりの構想を伺いました。

元空き家のホテルから始まる商店街活性化!仕掛け人は、大工の棟梁集団

滋賀県大津市で、空き家活用ホテルの建設・開業をきっかけに始まった駅前商店街活性化への動き。仕掛け人となった工務店と、大津市の景観を保全する建築士、ホテルに物件を提供された方のお話から、まちおこしに必要な要素やデジタル技術による支援の可能性を探りました。

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プロジェクトメンバーからの自主的な情報共有も

取材活動とは別に、霜野・下田平が空き家の活用やデジタルでの支援の可能性を探っている高野山の集落の現状や、総務省から関係人口創出・拡大のモデル事業として採択されている島根県邑南町「おおなんDIY木の学校」を見聞して得た知見を共有。触発される形で、堀田が以前訪れたという和歌山県の限界集落の事例の共有が行われました。

構造化から見えてきた、空き家活用事例が持つ共通項

プロジェクトメンバーに知見が共有され、まず行ったのは「空き家活用を体系的に理解するための事例の構造化」。

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各事例の構成要素を付せんに書き出して貼り、俯瞰する

各事例を「どんな人が(属性)」「何を用いて(道具)」「どんなことで(手法)」「何を目指したか(目的/価値)」の4つの要素に分類。また、取材時に語られたことも含め、オプテージの視点から「うまくいっている点(成果)」と「うまくいっていない点(課題)」を洗い出しました。

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あっという間に模造紙いっぱいに付せんが並んだ

すると見えてきたのは、オプテージが「空き家活用の成功例」として取材先に選んだ各事例が備えていた二つの共通項。一つは、主体となって動く人(プレイヤー)が確立されている点。もう一つは、プレイヤーたちが収益を上げる仕組みができており、それが周辺の人を巻き込み、活動を継続できる要因になっている点です。

事例ごとの特徴にも気付きが。例えば、プレイヤーの属性に目を向けると、泉北ニュータウン再生プロジェクトの場合は、行政のサポートを受けつつ主体となっているのは「まちに住む人々」。大津市駅前商店街の場合は、木の家専門店 谷口工務店という「地域の外から入ってきた企業」が中心となり、まちの人や物件所有者を巻き込み、事業を起こしました。異なる属性のプレイヤーが、それぞれの方法で周囲を巻き込み、空き家を活用するプロセスに成功しています。

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事例の共通点や課題、それぞれの疑問点について話し合う

一方で、それぞれのまちが持つ課題や、活動を拡大する際のボトルネックとなっている要素も見えてきました。

例えば、摂津市のママサークルや泉北ニュータウン取材時に語られた、地域コミュニティの基盤となるような「みんなが気軽に集まれる場所」がないという課題。取材に参加した霜野、下田平は、「ニュータウンには、働く、学ぶ、楽しむ場所がない」と語った堺市ニュータウン地域再生室・高松さんの言葉も引き合いに出していましたが、これらには郊外にベッドタウンとしてつくられた「まちの成り立ち」が関係しているのかもしれません。長い歴史を持つ大津市駅前商店街には、集会の場や長年培われた強固な地域コミュニティがある反面、まちの急速な変化を歓迎しない方も一定数おり、まちに愛着が強いからこそ全体の意識の統一には時間がかかるという話も聞きました。

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白熱する議論の中、椅子から立ち上がり考えを深めるシーンも

一言で地域活性化といえど、まちにより課題はさまざまですが、「どの活動も主体となって牽引するプレイヤーがいるものの、まち全体やほかの地域の人を巻き込むまでの大きな動きには至っていない」共通課題も見出すことができました。また全体を俯瞰していて、素晴らしい活動を行うプレイヤーが多くいるものの、ほかの地域のプレイヤーとの接点がなく、シナジーが生まれていないことへの気付きも得ました。

振り返りを経て起こった価値観の転換。空き家は「まちづくりへの可能性」

ここでプロジェクトメンバーは再度、空き家をテーマに選んだ初期の疑問に立ち返ることに。

知見を整理し新たになった視点で「空き家問題の本質」を問いの形に整理します。まず各人で考えを文章化し、11の対話形式でお互いの考えを深めた上で、全員で共有し議論するというステップを踏みました。

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話し相手を交換しながら自分の意見を発表。短い時間で意見交換とブラッシュアップを繰り返していく

この段階でプロジェクトメンバーに共通して生まれていた問いが「空き家そのものは問題ではなく、可能性なのではないか」、そして「空き家活用は目的ではなく、手段である」という認識。これは、饗庭さんはじめ取材時にプレイヤーたちが語ってきた言葉でもありました。その認識が転換点になり、世間的にいわれる課題として空き家の増加を掘り下げるのではなく、どうすれば空き家活用を促進できるかへと議論はシフトしていきました。

「まちをよくするとは、ハード面とソフト面どちらの整備なのか」と、単体の空き家活用からまちづくり全体を視野に入れた話へと発展するなか、議論が深まるきっかけとなったのが「まず必要なのは、地域コミュニティを活性化させるプレイヤーを生み、活動を発展させる仕組みづくりでは」という霜野からの仮説の提示。

取材したプレイヤーたちは、「コミュニティや地域の活性化」の目的が先にあり、結果的に空き家・空きスペースを活用していました。つまり、活動の主体となるプレイヤーを増やし、地域のコミュニティ活動を活性化することが先決なのではないでしょうか。

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発表の仕方、意見のまとめ方にもそれぞれの個性が出る

まちごとに特性や住む人のニーズは異なるほか、大津市駅前商店街の取材では「まちを活性化するなら、地域に入り、住民と話をしながら独自の路線を開いてほしい」という声もありました。主体となるプレイヤーに、まちの人、外から入る企業のいずれがなるにせよ、「このまちをどうしていきたいか」を描き、まず対話をする。そうして地域の人からの共感を得て、協力者として加わってもらうことで、コミュニティを拡大し、活動を活性化していく。そんな地域の人を多く巻き込んだコミュニティに主体となってもらいながら、オプテージが共創することで、活動の大きな推進力となれるのでは。1時間以上にわたる議論で、そのようなイメージを描くことができました。

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お互いの意見を尊重し、ときに戦わせながら、オプテージが行うべき空き家活用について方針を探る

プレイヤーを支援する仕組みづくりとは別の課題も俎上に上がりました。活用可能な空き家物件が流通しにくいという根本的な課題です。取材で幾度と耳にしたほか、霜野と下田平は摂津市で空き家物件の確保に苦慮し、体感したことでもありました。

まずはプレイヤーとともに活用事例のバリエーションを増やし、物件所有者に「空き家物件は活用できる」認識を広げていくという実践的な案のほか、活用方法をメニュー化し活用プランを立てやすくする、プラットフォームをつくり空き家の流通量を増やすといったアイデアが語られました。まずは、仕組みをつくった上で物件所有者の認識を変えていく必要があるため、長期的な取り組みにはなりますが、プレイヤーへの支援との両輪で進める必要があります。

まちの人々を主役に、ともに未来のまちをつくるためのステートメント

議論を尽くし、プロジェクトメンバー中の認識が統一されたところでワークショップは締めくくりへ。

IT・インフラ事業者として、オプテージが空き家をどう捉え、どのような方針で活用に取り組んでいくのか」を、明文化したステートメントにまとめます。

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空き家自体の捉え方から、活用法や地域コミュニティ活性化への寄与などさまざまな議論が行われた

ステートメント作成にも、「誰のため、何のために空き家を活用するのか」「活用には何が必要か」「その中でオプテージは何をすべきか」と、今日の議論を振り返り、確かめ合いながら1時間以上の時間をかけました。

------------- ステートメント -------------

①空き家を「問題」ではなく、「可能性」として捉える

人口減少時代に突入し、「住むだけの場」が間引かれ、「学び、働く、楽しむ場」を増やすという新たなまちづくりが可能になる。空き家・空きスペースはその資源として有効活用できる。

②空き家活用を促進するために、地域コミュニティの創出、活性化を行う

空き家を活用した場づくりへのニーズは、まちによって異なる。主となるプレイヤーがまちの人であれほかの地域からの人・企業の参入であれ、そのまちの目指すべき姿を考え、活動していく必要がある。また、周囲を巻き込み、協力者を増やし、コミュニティをつくっていくことが、活動の推進力となる。

一方で、地域コミュニティには、活動を広げるための情報発信・共有の量や方法が不足し、非プレイヤー層の巻き込みや企業・他地域のプレイヤーとのつながりを得にくく、活動の拡大やシナジーを生みにくいという課題がある。また活動の継続には、マネタイズのための事業スキームの確立も必須。

情報共有、情報発信、マッチングはデジタルITが得意な分野。オプテージは課題をITで解決するソリューション事業者として、今後この分野でプレイヤーやコミュニティの創出・支援を行っていく。

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こうして、空き家活用のために「人」を支援するというユニークなステートメントが完成しました。オプテージのフォーカスが、ものとしての空き家の利活用からプレイヤーへの支援へと変わったのは、実際に会い、話を伺った方々の強い思いや姿勢から受けた影響が、少なからずあったからでしょう。

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左からオプテージ宇田、霜野、下田平、田中、辻、堀田

ステートメントを完成させ、これからは具体的な共創や支援の模索へと取り組みを進めていくことになります。その一方で、世間的にいわれる空き家の増加により発生するリスクへのソリューションが必要なのもまた事実。看過せず向き合い、議論を推進していくべきだと考えています。

別日、会議室に資料を広げた霜野と下田平の姿がありました。空き家をテーマにした議論がまた始まっています。
【空き家ワークショップ反省会】「結局、空き家の問題って何?」を改めて考えてみました

(文/鷲巣謙介 写真/櫟原慎平)

〜 オプテージ社員のコメント 〜

オプテージは情報通信会社として地域に密着する仕事をしていますが、従来の業務ではまちの人々と顔を合わせる機会はほぼありませんでした。それが、コ・アップデート・関西の取り組みを始めてから、地域の方々と出会い、ビジョンを話し合えるようになりました。これは非常に貴重な経験です。また対話によって、空き家という一つの事象も異なる捉え方ができる点や、地域活性化の取り組みやビジネスを起こそうとしている多くの人々がいると知ることもできました。
一方、本日の振り返りで気が付いた課題もあります。さまざまなステークホルダーに取材をしてきたつもりでしたが、不動産業界からの視点が不足しており、空き家増加の現象と原因についてさらに多面的に意見を聞いていく必要があると感じました。ステートメントを指針に、社内でもコ・アップデート・関西に参加してくれる人を増やし、具体的な活動へと推し進めていきたいと考えています。

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