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【空き家ワークショップ反省会】「結局、空き家の問題って何?」を改めて考えてみました

2019.12.20
【空き家ワークショップ反省会】
「結局、空き家の問題って何?」を改めて考えてみました

空き家の活動を振り返ったワークショップでは、「空き家は問題ではなく可能性である」というキーワードのもと、空き家活用に必要な取り組みについて話し合いました。
一方で、空き家が発生する要因や周辺住民への影響、自治体の抱える悩み、所有者側の事情など、十分に議論し切れなかった部分も多くあります。
そこで今回は、オプテージの霜野、下田平、取材に携わった編集部が、空き家自体の「問題・課題」に改めて焦点を当てて、取材で見えてきたこと、見えていないことについて振り返りました。

取材やワークショップでは話し切れなかった、空き家自体の問題

霜野:空き家のワークショップ、お疲れさまでした。

編集部:お疲れさまでした。大幅に時間をオーバーしましたね(笑)

霜野:そうですね。ワークショップでは空き家を可能性として捉えて、地域のコミュニティを活性化させることで空き家活用の促進にもつながる、という一つのステートメントを出すことができました。一方、空き家の課題・問題については議論し切れませんでした。

編集部:今回取材させていただいた方々からは、あまり空き家の問題・課題について意見が出てこなかったですよね。

下田平:例えば隣が空き家で長い間放置されていて今にも倒壊しそう、というような直接的な害がないと、なかなか問題・課題と認識しないのかなと思います。

編集部:一方でそのような直接的な問題を持っている人や自治体への取材は不十分だったかもしれませんね。

霜野:今回のステートメントはとてもポジティブなものになりましたが、世間一般に言われる空き家問題についての解決策になっているのか、もう少し議論したいなと感じました。今回はオプテージ自身が自ら記事を書く初めての「ミニ記事」ということで、ワークショップでは話せなかった部分をオープンデータも参考にしながら話していきましょう!

空き家放置の理由は「面倒くさい」と「いつか使うかも」?

霜野:空き家の発生要因については、国などが発表しているオープンデータで見ると、やはり両親の死去から相続をきっかけに空き家になる割合が高いですね。

編集部:あと転居の割合も高いです。特に郊外の戸建てでは両親が高齢になり、交通や買い物の不便さから駅近のマンションに移住するケースが多いようです。

下田平:そのときにすぐ売るのではなく、いつか子どもが家を建てるかもしれないから家はそのままにしておこう、という考えがあるんでしょうね。

霜野:子ども側も相続したとして、すぐにその家へ引っ越すわけでもないでしょうしね。特に転居のケースだと両親はまだご健在なので、今まで育ってきた家を売るという決断は、心理的になかなかできなさそう......。

編集部:誰も使っていないけれど不動産市場に出回らない、饗庭さんが言っていた「空き家っぽい状態」とはこういうことですね!

下田平:私たちが摂津で空き家を探しているときにも、普段は使っていないけれど月に1回くらい帰ってきて友人たちとカラオケで使う、というケースがありました(笑)

霜野:機会は少ないけれどたまに使うとか、売るにしても家の中の荷物を処分しないといけないとか、不動産屋を探して交渉しないといけないとか、そういう心理的なハードルが持ち主側にもあるんだと思います。

編集部:一方で「空き家っぽい状態」のまま保有し続けることのデメリットは?

下田平:固定資産税がかかるくらいですよね。それも年間数万円なので倉庫代と考えればそれほど負担ではないのかもしれません。

霜野:あとはメンテナンスですよね。草むしりとか掃除とか。ただそれだけで家を手放す動機にはなりにくいのかも。メンテナンスは面倒くさいですが、手放すのはもっと面倒くさい。それに、いつか使うかも、という希望的観測も加わって、結局そのまま放置するというケースが多いのかなという印象です。

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空き家問題についてメインで取り組んだ、下田平(左)と霜野(中央)に加え、取材に携わった編集部も一緒に振り返りました

空き家問題、困るのは誰?

編集部:空き家が放置されていることで起こる問題・課題は何だと思いますか?

霜野:空き家自体が引き起こす問題・課題はどの資料でも共通していますね。まず景観の問題、そして防災上の問題、あと防犯上の問題ですか。

編集部:それらは周辺住民が感じる問題点ですよね。ほかに困る人はいるのでしょうか?

下田平:周辺住民から対応を依頼される自治体も困っていると思います。対応依頼があっても問題のある空き家に対して自治体が直接手出ししにくいのかも。

霜野:その問題については2015年に空家等対策特別措置法が制定されましたね。周囲に重大な影響を及ぼす特定空き家を対象として、固定資産税の減税措置がなくなったり、自治体が代わりに解体したりできるというものです。

下田平:そもそも特定空き家の定義が難しいですよね。総務省の資料には空き家の持ち主は調査をすれば9割は特定可能と書かれていますが、特定できても持ち主とコミュニケーションが取れない、応じてもらえないという事態もありそうですよね。

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総務省や国土交通省などが出している空き家に関するオープンデータを見ながら、取材では追いきれなかった問題について改めて考えました

編集部:自治体が代わりに解体しても、その解体費用を持ち主から回収できていないケースも多いようです。

霜野:空き家バンクもありますが、なかなか登録件数が増えていないようですね。登録してある物件も再建築不可や立地が悪いなど何か問題がある物件がほとんどで活用しにくい......。

下田平:結局、ワークショップでの議論に戻るかもしれませんが、空き家の直接的な課題である、景観、防犯、防災上の問題は空き家がうまく活用されていけば自然となくなりますよね。

所有者は自分の空き家がこんなふうに使えるとは思いもしない

編集部:ワークショップでは空き家活用の担い手として、地域コミュニティの活性化が不可欠という話をしましたが、地域コミュニティが活性化しても結局空き家が市場に出回らないと空き家活用は進まなさそうです。空き家の持ち主側の問題はどういうものが考えられそうですか?

霜野:市場に出てこないという話でしたが、持ち主にとっては自分の思っている価格で家が売れないという問題もあると思います。山間部や不便な場所など需要が少ないエリアは叩き売りのような価格で取引されているようですし、自分が購入した時代に比べて、例えばバスの本数が減って土地価格が大きく下落しているというケースも多いようです。売れる場合でも相続人が複数いると全員の合意が必要になるので、そこでつまずくことも多そう。

下田平:手放すことに抵抗が大きい場合は、賃貸型DIYという手段が有効かもしれません。売るのではなく貸す、ただし利用者の目的に合わせてリノベーションは可能にします。まだケースとしては多くないですが、今後空き家活用を増やす上で重要なスキームになると思います。

編集部:面白いですね! 空き家の持ち主に自分の物件を誰かに使ってもらおうと思ってもらうためには、ほかにどんな方法が考えられるでしょう?

霜野:ワークショップでも話しましたが、やはり空き家活用の事例が増えることが一番かも。今は都心部でカフェやゲストハウスといった事例が多いのですが、例えばベッドタウンや山間部の空き家活用などバリエーションが増えるといいですよね。

下田平:あと持ち主の近くでそういう事例が増えるのが大事ですよね! 自分ごと化しやすい。

霜野:自分の家を借りてカフェをしたいと思っている人がいるなんて想像もしてないんじゃないでしょうか(笑)。そういう可能性を知ってもらうことに加えて、持ち主のメリット、例えば地域や社会への貢献という大義的な部分と金銭面のメリットなどをちゃんと提示することが重要だと思います。

下田平:私の実家は兵庫県の山間部にあるのですが、通常の不動産屋に売ってくださいとお願いしてもなかなか売れなさそう。逆にスローライフ好きの人が好む雑誌やウェブメディアなどに、ここに住むとこういう生活を送ることができる、というソフト面と一緒にPRすれば、興味を示す人に当たる確率も高くなると思います。

霜野:空き家バンクの逆というか、空き家を活用したい人が物件を募集するプラットフォームって恐らくないですよね。自分の家も活用できるんだ、という認識が定着すると特定空き家になる前に救うこともできますね。

編集部:やはり活用事例を増やすこと、そしてその可能性を持ち主に届けることが重要ということですね!

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話しているうちに自分たちの実家や持ち家の「しまい方」の話へ。取材を通していろいろな活用事例を知れたからこそ、前向きに考えられます

自宅とオフィス以外の「場」のニーズ

編集部:ほかに気になっていることはありますか?

霜野:個人的には新築の戸建て住宅を作りすぎではないか、というのが気になります。特に建売物件ですね。私の家の近くでも分譲されていますが、なかなか買い手がつかなくなってきているようです。

編集部:特に日本では新築志向が強いというのはよく言われますが......

霜野:どこまでやるかによりますが、戸建ての場合、中古を買ってリノベーションする費用と新築を建てる費用とがそんなに変わらないですよね。

下田平:私は賃貸派ですが、戸建ての賃貸ってあまりないですし、あっても不便な場所が多い。ペットを飼っている方など需要は高いと思うのですが。

霜野:先日、谷口工務店さんが主催されているセミナーに行ってきました。働き方が大きく変わってきているので、それに合わせて当然住宅やオフィスなど「場」の在り方も大きく変わる、というお話でした。

下田平:私たち自身もコワーキングスペースや出張先で仕事をすることが増えましたね。今回取材したコミュニティでも「場」がないという課題があって、今までみたいに一つの企業に所属して家とオフィスを往復するという働き方の時代にはなかった、「場」に対する新しいニーズは出てきていると思います。

霜野:仕事だけでなく、個人でも例えば家とは別に自分の工房やスタジオを持ちたい、といったサードプレイスへのニーズは高まってくると思います。そのときに売るか貸すか放置するかしか選択肢がなかった空き家がさまざまな形で生まれ変わっていく未来というのはワクワクしますね!

編集部:そのために地域コミュニティの活性化にオプテージも貢献していく、というのがワークショップの結論でしたが、ほかにもユニークな事例やプレイヤーを紹介したり、プレイヤー同士をつないだり、という取り組みもこのメディアを通して継続していきたいですね!

霜野:上手くまとまりました、かね(笑)

-------------------- 編集後記 --------------------

今回、オプテージ社員による自主製作記事の第一弾として、空き家の活動を振り返ったワークショップの反省会の様子を記事にしてみました。

最後は無理矢理まとめました(?)が、やはり空き家問題はいろんなプレイヤー、要素が入り混じった問題で、ずばり空き家問題とは〇〇である、のようなまとめ方は無理だなと改めて実感しました。

ワークショップでは「空き家は問題ではなく可能性」と言い切って進めたものの、「問題じゃないと言い切っていいのか?」や「いわゆる世間一般に言われる空き家の問題に対しての回答になっているか?」というのが個人的に引っ掛かっていて、課題・問題に焦点を当てた延長戦をしましょう!と言ってやってみたのがこの反省会です。

まあ見事に話はいろいろなところへ広がり、空き家の発生原因から最後は働き方の話にまで発展するのがこのテーマの面白いところですね。恐らく何回やっても話はいろいろな方向へいってしまうはず(笑)

このように「オプテージの活動」では今後も取材の後日談や、取材で出会った方との継続的なプロジェクト活動、また通常記事で紹介しきれないプレイヤーや事例など、運営スタッフが独断と偏見で面白い!と思った内容をご紹介していきます!

(文/オプテージ 霜野佑介 写真/山下佳澄)

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