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【活動レポート・後編】多様な立場・視点での議論から見えた

プロジェクト② ”ちょうどいい”働き方・働く場

2020.11.26
【活動レポート・後編】多様な立場・視点での議論から見えた ”ちょうどいい”働き方・働く場の行方

前回の記事では、「コ・アップデート・関西」が2020年度に探求してきた「"ちょうどいい"働き方・働く場」についてこれまで行ってきた取材や、プロジェクトメンバー間での議論を整理し、このテーマにおいて私たちが考える論点と仮説を明らかにしました。

後編では整理して立てた仮説を基に、メンバーそれぞれが向き合ってきた働き方・働く場の変化を通じて得た視点を、座談会形式でぶつけ合いました。

前編でも触れたとおり、コ・アップデート・関西の活動は編集会議も取材もオンラインに移行しましたが、メンバーの働き方や働く場は業種の違いなどもあり、下記のように分かれました。

オプテージ......在宅勤務が標準の勤務体系に組み込まれた。部署や個人の裁量によるが、週2~3日程度出社が目安。チーム全体の出社率でコミュニケーションのバランスを取るなどしている。

南海電気鉄道......緊急事態宣言時以外は原則全員出社。部署によっては、週1回のリモートワークや本社以外の事業所をサテライトオフィスとして使う実験などの取り組みが始まっている。

ウエダ本社......緊急事態宣言時は2つのグループに分けて、出勤と在宅勤務を交代制に。その後はフル出社がベースになりつつも、希望者は上長に報告したうえで時差出勤・在宅勤務を取り入れている。

RE EDIT......オンラインでのイベント運営や、地元の個店を応援するためGoogleマップで広報活動を行うなど、リモートでの取り組みが以前より増加。代表・甚田さんの所属会社は、基本的には出社だが、在宅勤務も自由に選べる。出社が多いのは、デザイナーが多くマルチスクリーンで作業をしたいなど、設備面が大きな理由。

組織としての対応は、このプロジェクトメンバー間に限っても差があります。それぞれの違いを踏まえ、仮説にあがったポイントをトピックにディスカッションの模様をお届けします。

創発、ブランディングを担う「相互作用の場」へ。変わりゆくオフィスに見られる回帰傾向

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――オフィスワークか、在宅を中心としたリモートワークか、急激な変化を前に議論は引き続き活発です。私たちは選択肢が増え、組織も個人も「"ちょうどいい"働き方・働く場」を見つけていくのではと考えてきました。

南海電気鉄道:みんなもっとリモートワークしているんじゃないかなと思っていたんですよ。しかし、鉄道の輸送人員を見ると、全体としては30%ぐらい減っているんですが、定期券外のお客さまが減少したままでなかなか戻ってこない一方、定期券を使用されるお客さまは7月以降比較的戻って来ているという感じで。実は意外に早く、オフィスに戻っているんじゃないかなと感じています

――通勤費を定期代で出さないという企業も出てきました。

オプテージ:当社もそこは議論されていなくて、制度面での見直しはまだまだですね。

南海電気鉄道:通勤費と在宅手当は経理処理の項目が違うので、切り替えるのが急には難しいという面があると思います。結構大々的に取り上げられてはいますが、まだまだ少数派なのでは。

――このプロジェクトでは大きな変化を捉えて探索を行っていますが、実際はそこまで極端なことは起こっていないようですね。仮説では、オフィスの新たな意味付け、在宅ワーク環境の整備、サードプレイス利用の促進と選択肢が増え、分散されていく方向も見出しました。

南海電気鉄道:リモートワークに対するアンケート調査を見たんですが、予想以上に「環境を整えて自宅で働きたい」という声が多くて驚きました。私としては、自宅は働きにくいというイメージがあったので意外です。

――ウエダ本社のお二人は、営業やイベント活動で人と会う機会も多く、いろんなお話を聞かれているかと思うんですが、実情はいかがでしたか?

ウエダ本社:優先順位はオフィスがまだまだ高い印象。仕事で関わる京都の企業でも、コロナ対策を踏まえたオフィスのリニューアルを考えていらっしゃる方が多いです。今日も「約8割の出社を想定した際のレイアウトを念頭に入れたオフィス」を設計したいという話がありました。ほかにも「フル出社したときに飛沫感染を起こさないレイアウト」の相談もあります。

面白い流れでは、大きな店舗を持っている企業が、店舗の一部をコワーキングスペースとして開放するニュースもありましたね。場所の選択肢はどんどん増えていくと考えています。

オプテージ:中原教授の取材でも話題にあがりましたが、オフィスを「相互作用が発生する場所にしたい」という声は実際にありましたか?

ウエダ本社:増えましたね。コミュニケーションを主体として創発を促すような場の機能を高めていく。そんな相談が多いです。

社会動向とともに出勤者数の割合を調整するといった柔軟な対応ができることを前提に、もともと2フロアあったオフィスを1フロアにするなど、オフィスを縮小する会社もあります。そこは縮小によって抑えられる経費をリニューアル時のデザイン部分に充て、「オフィスで人を引き寄せる」という、リクルーティングを目的に捉えているのが面白いなと思いました。

働き方としてもリモートを柔軟に選べるので、これから就活をする人には魅力的なんじゃないでしょうか。採用ブランディングのひとつですね

働く場に対するオーナーシップを持つために。求められる個人の仕事観のアップデート

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――こうしてみると、企業側に「オフィスを変えていく」「制度を考えていく」ことが求められ、実際に早く動き出している気がします。一方で、仮説では「1人1人がオーナーシップを持って働く場を選択する」展望を描きましたが、そこはまだ遠いのでしょうか。

オプテージ:自宅かオフィスかは柔軟に選べるようにはなってきていますが、ワーケーションをはじめとした自宅以外の場所からのリモートワークにはまだ壁がある企業も多いのではないでしょうか。

南海電気鉄道:在宅勤務とリモートワークが混同されているなと。リモートワーク=自宅で仕事をしないといけないと思い込んでいる人が、まだ一定数いると思います。

ウエダ本社:働く場所に関するオーナーシップを持つには、仕事に対するオーナーシップがないと実現できないと思います。労働や雇用が流動化していく中で、立つという意味でも律するという意味でも、自立/自律的な人材が求められていて、そういった人こそ場所を選びたがるのではないでしょうか

働く場や働き方を選ぶことは「自分が仕事で何をしているのか」と直結しているので、それをまず自ら考えて発信しないといけないし、それを認められる会社でないといけない。今は働く場が選べるようになりつつある一方で、自分はどう働いていくのかを改めて考えざるを得なくなったと思います。

オプテージ:コロナ禍でジョブ型を導入しようという話が盛りあがりましたが、結局日本企業には合わないんじゃないかという話も出てきています。ありなしではなく、落としどころを探っていこうという話だと思うんですが、評価制度などの環境面と、自分の業務や成果をどう担保していくかという自身のコミットメントと、両方がないと難しいですよね。

南海電気鉄道:ジョブ型にしろ在宅ワークにしろ、目的がないがしろにされて、ただ導入すればよいという方向になりがちなのが問題なんだと思います。働き方や働く場を変えることは、本来目的があって選ばれる手段じゃないですか。制度だけ取り入れて、手段と目的のすり替えが行われてしまうのではないかと懸念しています。

RE EDIT仕事や職場への向き合い方でいえば、同じデザイナーでも大きな画面がよいとか設備を重視する人もいれば、みんなの意見を細やかに取り入れながら作業を進めたい人もいて。どういった環境で働きたいかは、職種だけじゃなく個人の働き方にもよりますよね。
同じように個人の価値観という点では、コロナ禍の中、どれくらい衛生面を気にするかにも人によってグラデーションがあります。本格的に広まりはじめた時期には、オフィスでどの程度対策をすべきかが話題になることもあり、価値観の違いが浮き彫りになりました。

――感染症対策は今だけのことなのか、どこまで長期的な視点を持って決めればいいのかというのが難しいところです。感染症に対する考え方の違いを、抽象度を上げ、価値観の違いとして捉える。リアルな場を共有するということは感染症だけではなくて、人と人との距離感や音の聞こえ方、デスクでの過ごし方などいろんな価値観を共存させることなので、限定的な感染症対策ではなく、「リアルな場で価値観を共存させるためのプロトタイピング」と捉えると、継続的に考えられる本質的なテーマになり得るのではないでしょうか。

対面の価値再探索から物理的制約を超えるXRまで。変化とともに探り続ける「ちょうどいい働き方/働く場」

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――これまでの探索から導き出した仮説と向き合い、新たな問いを生む議論となりました。このプロジェクトで今後、どのようなことに取り組んでいきたいですか。

南海電気鉄道:最近、VR空間にオフィスを移転する企業のニュースを見たのですが、本当にそんなことが実現できるのかを聞いてみたいです。われわれは働き方や働く場をテーマにリサーチしていますが、オフィスであれ自宅であれ、いまのところ物理的・フィジカルな空間から離れられていないわけです。しかしVR 空間となると根本的な考え方が違うのか、話題性もあって進めるのか、思惑を含めて気になっています。

ウエダ本社:先日ウエダ本社で主催した「京都流議定書」というイベントで、アバターを活用した事業について、アバターイン株式会社の方に話をしていただきました。VR とは少し視点が違いますが、リアルな場にロボットがいて、自分は自宅から現地のロボットの身体や視点を借りて旅行を楽しんだりする仕組みです。複数の場所に同時に存在することも可能で、いつでもどこでも会議に参加できるともおっしゃっていて、オフィスへの活用もできるのではと思います。

オプテージ:アバターは一人の視点や知見を複数人で共有できるという点も興味深いです。オフィスだけではなく新しいビジネス体験としても面白いなと思いました。

南海電気鉄道:人間の肉体的な限界を超える可能性がありますね、視界を360度にしてみたりとか。

オプテージ:現時点でのリモートワークに関する議論って、オフィスにおけるコミュニケーションをどこまで再現できるかという、代替の方向性でしかないですよね。バーチャルやアバターとなってくると代替手段を超えてリアルにはない新しい価値が提供できる。当社としてはその方向も探りたいなと思っています。

RE EDIT私は、コロナ禍に限らず、おそらくオンラインが主流になっていく中での対面の価値を追求していきたいと思っています。所属している会社では、泉北ニュータウンでサードプレイスの運営もしていく予定なので、「なぜ集まるのか」「どうすれば安心して利用できるのか」を探索する必要もあります。私自身もリモートで会議に参加するし、メリットを感じている部分もありますが、ニュアンスを汲み取ったり、人数が多い場面では対面のコミュニケ―ションに頼りたくなる瞬間があり、そういった価値を言語化したいと思っています。

オプテージ:対面でしか得られない価値は、裏返すとリモートワークの今の弱点を探っていくことになると思います。そういった視点を持ちながら課題探索してみたいですね。泉北でのサードプレイスの運用が始まったら、まさに対面でしか提供できない価値を追求されていくことになると思うので、メディアとしてもリアルとリモートワーク両方の価値を追っていければよいですね。

ウエダ本社:私たちはオフィスのあり方を考え、価値提供していく事業をしているので、これまで通りオフィスの位置づけや意味づけを、多様な方々の知見や実例をもとに探索し、実験をしていきたいです。オフィスで必要とされるツールを探ったり、コンセプトを一緒に考えるプロセスは事業にも直結します。自治体でも大きな変化が起きているようなので、そのあたりが動くとさらに広がる可能性がありますし、探ってみたいところ。

また、このプロジェクトで議論しているメンバーの中でもかなり組織や働き方に違いがあるので、企業間留学を行ってお互いの企業のよいところや悪いところを実感したうえでプロジェクトに反映させていくという経験ができると面白いと思いました。

南海電気鉄道:企業間留学、面白いですね。うちの会社だと、研修の一環としてベンチャーに出向する制度はあったりします。

ウエダ本社:実際にスキルと業務がマッチする方は、副業としてウエダ本社で働いていただく制度が動き始めているんです。今だと、大学関係の方にわれわれの取り組みにアドバイスをいただくという関わり方をしてもらっていて、すごくプラスになっています。どうしたらこういう動きが広がっていくのかを日々議論しています。

オプテージ:人事と話していると、外部の人材をどう活用していくかも話題にあがることはあるので、課題意識はあると思います。やり方を考えましょう。

コ・アップデート・関西は私たちが主催するメディアではありますが、参加いただいている方々それぞれに、何かを持ち帰っていただくところも期待しています。あまりかけ離れたことはできないですが、これからもできるだけみなさんの興味や関心事を知り、一緒に探索していきたいです。今日のディスカッションの内容も、次の記事の企画やアウトプットの形で検討していきたいと思います。

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前後編に渡り、コ・アップデート・関西で探索してきた「"ちょうどいい"働き方・働く場」のここまでのプロセスを振り返りました。新型コロナウイルス感染症の流行は急激な変化を求めましたが、社会もまた私たちと同じように、どちらかを選ぶのではなく、変化の中でちょうどよい落としどころを探し続けているように感じられます。

議論の中でもあがったVRやアバターを用いた仮想空間の活用など、テクノロジーの進化が大きな変化を促すこともあるでしょう。このテーマでの探索は、終わりのない探索になるかもしれません。今回のディスカッションでは、改めて働く場を選ぶためには働き方へのコミットメントが問われる発見もありました。コ・アップデート・関西では引き続き、「"ちょうどいい"働き方・働く場」を探索し、議論し、私たちなりのあり方を提示したいと考えています。記事を通じてぜひ、ご一緒しましょう。

(文/遠藤英之)

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