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ってなに?

職人技の暗黙知化を否定してこそ 製造業は次のステージに進める

プロジェクト③ 製造現場で求められるDXの本質

2021.08.27
職人技の暗黙知化を否定してこそ
製造業は次のステージに進める

あらゆる産業分野に共通する人手不足の問題。とりわけものづくりの現場では、技術者の世代交代の遅れにより、技能人材の不足が深刻化しています。

そこで今回は、製造業の技術・技能伝承の問題にいち早く目を付け、デジタル技術を活用した先進的な取り組みで成果を挙げている2社のトップをお招きしました。自動車分野などでパイプ加工を手掛ける武州工業の会長・林英夫さんと、製造業に特化したコンサルティングを行うO2の会長兼社長CEO・松本晋一さんです。両社の取り組み内容とともに、その根幹にある「人とデジタル技術の関係性」に対するお考えなども伺いました。

オンラインで実施した取材には、法人向けの新サービス開発を担うオプテージのメンバーも参加。中小製造業の技術・技能伝承の実態を把握し、ITベンダーに求められる役割を探る機会となりました。

"職人技"を美化するから伝承に時間がかかる

――まずは、それぞれの会社の特徴を教えてください。

林:自動車や医療機器などに使用されるパイプを製作する、社員数150名ほどのものづくり企業です。パイプをつくる仕組みそのものを自社で開発している点でかなり特異な会社だと言えます。今から30年以上前に、一人の技術者が材料選定から加工、納期管理までを一貫して行う「一個流し生産」を導入し、工場のレイアウトから機材まで全て自分たちでつくり上げ、生産性向上につなげてきました。その延長で、取引先と在庫状況などを情報共有することもできる「BIMMS」というIoTを活用した総合情報管理システムを自前でつくり、外販も行っています。私たちは、機械に任せるべきところは任せて、人にしかできないところで社員が主体的に動くための仕組みづくりに注力しています。

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1990年代はじめに武州工業が導入した「一個流し生産」は、リードタイムの短縮や生産コストの削減に効果的だが、複数のスキルを併せ持つ多能工を育成する必要があった

松本:O2では製造業をはじめとする技術系企業の改革支援をメインに行っています。特徴はグループ会社に、IBUKIという金型メーカーのほか、自然言語系のAIシステムを開発する会社などがいることです。ひとくちに改革と言っても企業の課題はさまざまなので、その時々でグループ各社のノウハウを掛け合わせます。例えば、AIと金型の連携によって新規事業を企画するなど、113あるいは5になるようなソリューションを生み出しています。今日は製造業の技術・技能伝承がテーマということで、私が会長を兼務している金型メーカー・IBUKIの事例を中心にお話できればと思います。

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グループ各社の経営資源をミックスさせ、製造業のあらゆる課題に対応できるのがO2の強み。各社の顧客案件がコンサルティングに結びつくケースもあるという

――人手不足に悩む中小製造業の多くが、ベテランから若手への技術・技能伝承の遅れを実感しているようですが、原因は何だと思いますか。

松本:長年の経験で磨き上げた勘がものをいう職人技を無条件に称賛して、「伝えにくいことに価値がある」「暗黙知こそ素晴らしい」という意識が根強くあり、伝承を妨げているような気がします。

林:職人技を美化する風潮、確かにありますね。それゆえ熟練工のほうも「俺はすごいんだ」と自尊心が大きくなり、昔ながらの「見て覚えろ」のやり方がまかり通ってしまう。仕事をひと通り覚えるのに510年かかるようでは、今の若い人はついてこないでしょう。

一方で、技術・技能伝承を取り巻く業界の状況は変わりました。昔はお客さまである大手メーカーがさまざまな知見を持っていて、我々中小企業の技術者の育成に関わってくれていました。しかし今はもう、社内で技術者を育成しないと方針転換した大手企業もあり、技術は大手企業から中小企業に移転されている状態です。技術やノウハウを持っている中小企業側が技術・技能の伝承にしっかり向き合わないと、業界全体の成長どころか、低迷に歯止めがかからなくなるのではと危惧しています。

松本:業界全体でもっと早く取り組んで、解決しておかなければならなかった課題ですよね。社会がめまぐるしく変化し、新たな経営課題が積み上がっていくなかで、技術・技能伝承に時間をかけている余裕はないはずなのに、なかなか進んでいない今の状況を見ると、歯がゆいというか、非常に焦りを覚えます。

若者を惹き付ける創造性ある仕事が少ない

――技術を伝えようにも若手がいない、募集しても集まらないという切実な声もよく聞かれます。どこに問題があると思いますか。

林:少子化や職業の多様化など社会的要因も少なからずあるのでしょうが、製造業の魅力そのものが薄れているのではないでしょうか。NC工作機械などは今やどこの中小企業にも入っていて、人間が頭や手を動かさなくても機械が何でもつくってくれる時代なので、純粋にものづくりがしたいという若者は面白みを感じにくいのかもしれません。

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社長時代から「人を中心としたものづくり」を追求し続ける林さん。シリコンバレー発祥のデザインシンキングに学び、社員の発想力や行動力を引き出し、短期間で製品化・事業化を実現する仕組みを整えた

松本:機械の進歩が早すぎて、人間が置いていかれている感はありますよね。人間が何年もかけて修得した技を機械が簡単にやってのけるようになって、技術者の存在価値が薄れているんだと思います。本来は、もっとよい方法なり製品なりを人間が考えて、それを自動化するための機械や仕組みをつくり出していくのが技術者の役割ではないでしょうか。

林:技術者の活躍の場をつくって、若い人がものづくりの面白みを感じられる環境に変えていかないといけませんよね。

松本:ものづくりが好きな人って、新しいものをつくりたいという期待を持って入ってくると思うんですけれど、実際の製造現場は品質を維持するための制約が多く、創造性ある活動がしづらいという側面もありますよね。若い人が入ってこなかったり、すぐに辞めてしまう背景には、そうした期待と現実のギャップもあるのかもしれない。

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松本さんはIBUKIの前身である老舗金型メーカーを買収後、6年間赤字続きだった状態から1年で黒字へと転換させた。そのIBUKIでも製造現場の技術・技能伝承の課題に直面し、職人技を特別視する社内風土にNOを突き付け、抜本的な改革を推し進めた

若手主導・短期間で高度な職人技をマスター

――技術・技能伝承を阻む問題点がいくつも浮かび上がってきましたが、お二人の会社ではどのような対策を打ってきましたか。

林:自分が培ってきた技術に固執する「職人気質」の熟練工が幅を利かせていると、技術・技能の伝承は遅々として進みません。そこで、技術的に一番難しいことを新入社員全員に修得させる「入社時必修2週間プログラム」を30年ほど前から実施しています。教えるのは「アルミのろう付け」という金属接合で最も難易度が高いとされる技術です。それが難しいかも易しいかも分からない先入観のなさがプラスに働いて、上手い下手の個人差は多少あるものの、2週間もあればみんな7080点レベルに達します。つくるのは一点ものの芸術品ではなく量産品ですから、どんな業種でも70点くらいの技術レベルに達すれば品質基準をクリアできるはずです。

松本:武州工業さんの取り組みは、世の中の製造業にとって大変重要なヒントになると思います。職人技って100点とか98点を目指すから時間がかかるのであって、実は60点から80点くらいできていれば、だいたいの仕事は一人でこなせるし、業務全体もスムーズに回っていきます。さらに、新人が難易度の高い技術を当たり前に使うようになると、ベテランの職人自身も「今まで誇りに思ってきた自分の技術ってそこまですごいものではないんじゃないか」と気付き始め、職人技や暗黙知に対する無駄な美化が崩れていくんですよね。

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武州工業では、技法習得の研修のほか、若手支援のノウハウを学ぶ役職者向けの研修や、働くうえでのやりがいを見つけるプログラム、若手が会社全体のイベントを設計するプロジェクトなど、社員が自発的に働けるような仕掛けがたくさん用意されている

――プログラムの導入時、ベテラン技術者の抵抗や反発もあったのでは......。

林:最初のうちはやれるものならやってみろと冷ややかな態度を示す人もいましたが、実際に新入社員が2週間でアルミのろう付けをマスターし、それ以外の仕事も難なくこなせるようになると、自分の負担が減って楽になると分かって、むしろ喜ばれるようになりました

――教えるうえで何か工夫していることはありますか。

林:新入社員の指導は毎年1つ上の先輩社員に任せています。歳が近い先輩のほうがいろいろと聞きやすいでしょうし、何より先輩社員の成長が期待できます。原点に立ち返って新たな気付きを得たり、素質のある子から刺激を受けたりして、2年目でひとまわり大きく成長する社員は多いですね。

松本:うちもまったく同じで、技術や技能を新人に教えるのは若手技術者の役割です。ベテランにとって自分の新人時代はとうの昔なので、新人が何を分かっていて何を分かっていないのかが想像しにくい。でも若手なら、数年前までは自分も同じ立場だったので、新人でも分かる言葉で説明することができるんです。

私たちは、グループ会社のIBUKIで「Polaris」という技術・技能伝承のシステムを開発・導入しています。製造工程を細分化し、それぞれの手順やコツを動画・音声・文字情報で初心者にも分かりやすく教える仕組みです。単に手順を並べるのではなく、何をやると何が起こるかといったインプットとアウトプットの関係を整理しました。要は技術の棚卸しですね。このシステムを活用すれば、2週間から1カ月で60点程度の技術力を身に付けることができます。YouTube世代の若手社員には、動画付きで何度も見返せるこの仕組みが合っているようです。

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IBUKIの技術・技能伝承システム「Polaris」の画面。入社23年目の若手社員がコンテンツをつくり、利用した新入社員の声をもとに毎年改良を加えている。編集画面がExcelになっているため、誰でも簡単に追記できるのも大きな特徴

暗黙知化した職人技ほどデジタル化に適している

――技術・技能の伝承にデジタルツールをうまく活用しているんですね。

松本:そもそも、ものづくりの仕事は、大きく2つに分けることができます。ひとつは、誰にでもできる作業化された仕事、もうひとつは、一部の人にしかできない神業的な仕事。今は作業系の仕事を機械化・デジタル化することが流行りですが、神業系も対象にしていかないと本質的な課題解決には至らないと思っています。そこで私たちは、技術者自身もうまく言葉で表現できない、暗黙知化された技術をデジタルで数値化することで、社員の誰もが神業を使いこなせる仕組みをつくりました。

――神業とデジタル技術の融合は難しそうな気もしますが、具体的にどのようにアプローチしているのでしょうか。

松本:ベテラン技術者が人に教える様子を見ていると、感覚的な部分をうまく言葉にできないものだから、「ここをこうやってこう。いやそうじゃなくて、こうだよ」という感じで、「こそあど言葉」のオンパレードなんですよね。そうした暗黙知化した職人の動作や思考を数値化し、後付けで理論化するのが、デジタル技術の効果的な使い方だろうと思っています。

例えば、王貞治さんの時代はホームランを打ったコツをたずねると、「カーン!と打っただけです」みたいな抽象的な表現でしたが、今メジャーで活躍中の大谷翔平さんは「打球の角度です」と明確に答えるそうです。IBUKIでいうと、金型の表面を磨く作業であれば、動画と言葉で「強く磨く」と伝えたところでどの程度の強さかは分かりませんよね。そこでセンサーやAIを使ってベテランの磨き作業の圧力などを測定・数値化し、どのくらいの力加減で何回くらい磨けばよいかを明確にしています。いわゆるIoTですね。

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IBUKIでは技術の数値化・理論化を経て、以前はベテランに任せきりだった金型表面の研磨作業などを若手も担うようになった

――ベテラン技術者の反応はいかがでしたか。

松本:ポジティブとネガティブに分かれましたね。ネガティブ寄りの人はおそらく、技術が標準化されたら自分の仕事がなくなるんじゃないかという不安があるんだと思います。その意味で、デジタル技術の導入にはひとつポイントがあって、まずはデジタル適応力の高い人のいる工程から入れていく。経営者としてはデジタル化によるメリットの大きな工程から攻めたいんですけれど、実はそういう工程ほどデジタル技術を受け付けない人が多いので、先に適応性の高いところで結果を積み上げて、最後に本丸に持っていくのが望ましいですね。

林:結局、マインドの問題ですよね。ベテラン技術者のデジタル技術に対するネガティブな思考をいかにポジティブに転換させるかが重要であり、難しいところでもあります。

オプテージ:ベテラン技術者のマインドを変え、次のステージで活躍できるように実践されていることや心掛けていることはありますか。

林:マインドが変わるかどうかは本人次第ですが、新たなチャンレンジの場へ導くようにはしています。現場を離れて実験機械をつくったり、システム開発に携わったりするなかで今までとは違った仕事の面白みを見出し、毎日楽しそうに働いている人もいるので、マインドチェンジのきっかけとして環境を変えてあげるのも、よい方法ではないかと思います。

松本:ベテランの技術は素晴らしいし、リスペクトもしています。ただ、そこで満足しないでほしいんです。次のステージに行ってもらうためには、今の状態を否定するしかないので、ベテランたちには「今のレベルで自分に酔うのはやめてくれ」と何度も言っていましたね(笑)

製造業はまだ、デジタルを信頼しきれていない

――お二人ともいち早く製造業のデジタル化を進めていますが、全体で見るとまだ過渡期にあると思われます。これまでの経験も踏まえて、デジタル技術と人の関係性はどうあるべきだと思いますか。

林:製造業に関しては、昔とは比べものにならないほど品質や検査の基準が厳しくなっています。安全性には影響のないレベルの些細なミスさえも許されない。それは「些細なミスの裏には大きなミスが潜んでいるんじゃないか」という疑いがあるからです。実際、どんなに優秀な人間でも大ポカをやらかすことはあるので、厳しい基準・検査になって当然です。だったら、100点満点は取れないけれど99点を絶対に維持するAIのほうが信頼できるはずなのですが、今はまだどちらに頼るべきかの判断がついていない状況ですね。AIは閾値さえ決めてやれば絶対にミスを見逃さないレベルに達しているのだから、人間が確認することにこだわるのはいい加減やめたほうがいい。とはいえ、裏付けがないと社会は納得しないので、各分野でデータ解析などを十分に行ったうえでDXに向かうべきだと思います。

松本:AIに対する心理的なハードルは確かにあるでしょうね。人がやらないとダメだろうというのを機械でいいだろうと割り切る覚悟も必要だし、そこで余った人員を生かせばこんなユニークなものづくりができるよといったビジョンまで明示していかないと前に進めないのかなと感じました。デジタル技術と人の関係性というところでは、人間がデジタルを信頼しきれていないように見えますね。

林:例えば、製品の最終検査は人間が目視で行うのが当たり前になっていますが、あれこそAIに任せるべきですよ。会社としては不良品ゼロの報告が一番喜ばしいことなのに、検査する人間は不良品を見つけて「どうだ!」と胸を張ります。それが仕事だし、万が一見落としてしまったら各方面から怒られますからね。でもこれって働く人の人間性を無視していると思いませんか。私は人がやるべきではない仕事の最たるものが最終的な外観検査だと思っています。だからうちは、AIによる画像検査機を社内で開発しました。1台動き出したばかりですが、ゆくゆくは最終検査全般を自動化するつもりです。

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武州工業では人間による目視検査よりも高い精度を維持できるAI搭載の画像検査機を開発・導入した。品質管理の面だけではなく、社員がより心地よく人間らしく働けるようにと開発された

スペシャリストの力を借り、ITが分かる人材を育成

――お二人はそれぞれ、ITシステムを内製化していますよね。外部委託という選択肢もあるなかで、内製化を追求し続ける理由とは?

松本:シンプルに、メリットが大きいからです。普通は仕様書をITベンダーに渡して、その通りにつくって納めてもらいますよね。ところが実際に使っていくうちに、何かしら使い勝手が悪いなと感じる部分が出てくる。その修正をベンダーに依頼すると、また仕様書作成から始まって、時間とお金がかさむ一方なので、とにかくスピーディーに改善を重ねていける方法を選びました。こうしたデジタルツールは、ユーザー目線のカスタイマイズを細かく高速にすることで、ユーザーがどんどん使ってくれるようになるので、自分たちでコーディングできるというのは重要なんですね。

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「職場環境改善の『5Sパトロール』もタブレットのカメラを活用すれば大幅に省力化できます」と松本さん。タブレットで簡単にチェックできる専用アプリを自社開発した

林:過去にITベンダーとお付き合いした経験上、こちらの困りごとややりたいことがうまく伝わらなくて大変だったんですよ。彼らとのコミュニケーションに時間を取られるのはもったいないので、うちはITベンダーを入れない方針でずっとやってきています。

オプテージ:システムの内製化をしたくても、人材がいないからできないと諦めてしまうケースも見受けられますが、お二人の会社ではいかがでしたか。

松本:最初に外部の専門家を入れて、システム構築から社員の基礎教育までひと通りお願いしました。専門外の技術をゼロから修得させるのには膨大な時間を要しますから、技術者を新たに雇い入れるか、IT企業の技術者に来てもらうかのいずれかが近道だと思います。

林:うちも松本さんと同じ考えで、外部の人に入ってもらいました。ひとつ付け加えると、一部の社員をITのスペシャリスト化するのはおすすめしません。ものづくり企業である以上、ものづくりもITも両方分かる人間を育てたいので、うちではシステム開発を専門にやっていくにしても23年は製造現場を経験させる、あるいは現場の仕事を覚えてからシステム開発を経験させて、偏りが出ないようにしています。

技術・技能伝承の先にある製造業の未来

――今後、より多くの中小製造業がデジタル技術を使って技術・技能伝承を実現した場合、どのような変化が起きると予想していますか。

林:日本の一人あたりの労働生産性は先進7カ国の最下位にありますが、そこから脱却するのも可能だと思います。例えば、先ほど話題にした品質検査の工程には、うちの会社で現在23割の人手がかかっています。そこをデジタル化するだけで23割近くのコストを減らせるわけですから、おのずと生産性は向上しますよね。すごくもったいないことをしているんだと経営者が早く気付いて、デジタル技術に対する信頼性が低いお客さまともしっかりとコミュニケーションを取り、品質維持や低価格化といったデジタル化のメリットを明確に示していくべきだと思います。

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武州工業の取り組みは海外からも注目され、フィンランドの中小企業などが会社見学に訪れるほか、台湾などの海外で講演を行ったりもしている

松本:近い将来、製造業は間違いなくサービス業化していくと予想しています。その重なり合う領域で新しい価値を生み出せる創造型企業が時代の主役となっていくでしょう。日本の製造業には、誰かに言われたものをつくる力ではなく、世の中が求めていそうものをゼロからつくっていく力が必要です。だからこそ、技術・技能伝承などの目先の課題はさっさと片付けて余力を生み出し、未来志向の重要課題に取り組んでほしいんです。私たちは製造業のノウハウを流通させるプラットフォームを立ち上げようと準備を進めているところです。ものづくりのノウハウを売りたい人と必要とする人をデジタル技術でつなぎ、製造業の発展に貢献したいと考えています。

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業界を変革してきたお二人ならではの事例に触れ、「製造業が持つ技能・技術」への解像度が上がり、デジタル技術を活用するポイントが整理できたというオプテージのメンバー

聞き手/オプテージ 奥田奈央、林野紳一、大井慎太郎、霜野佑介、辻善太郎

(文/岡田香絵)

編集後記

聖域化された職人技をスタンダード化し、機械やデジタルに任せるべきは任せる。林さんと松本さんが確固たる決意で臨んだ技術・技能伝承の取り組みは、技能人材の不足に悩む中小製造業に勇気と希望を与えるものでした。

取材に参加したオプテージのメンバーからは「高難度の職人技を2週間で6、7割まで伝承できることに驚いた」「ものづくりを作業系と神業系に分けて考えるお話が非常に分かりやすかった」「技能・技術伝承の問題にはサプライチェーン全体で取り組むべきとの提言があったが、ITベンダーも無関係ではないと思う」など、製造業への理解がより深まった様子。さらに「DXに向けたコンサルティングなど、現場に寄り添った新サービスを検討したい」という力強いコメントもありました。次回も引き続き、製造業が直面する今日的課題をデジタル技術で解決する糸口を探っていきます。

  • 林英夫さん武州工業株式会社 会長
    1952年東京都生まれ。大学卒業後、精密機器メーカーを経て、父が創業したパイプ部品メーカー・武州工業株式会社(東京都青梅市)に入社。1992年に代表取締役社長に就任し、生産性を飛躍的に向上させる「一個流し生産」のほか、総合情報管理システム「BIMMS」などを自社開発し、55年間連続黒字経営を続ける。
  • 松本晋一さん株式会社O2 会長兼社長CEO
    1970年千葉県生まれ。大学卒業後、大手化学メーカー、外資系ITベンダーなどを経て、2004年に株式会社O2(東京都港区)を設立し、製造業のコンサルティング事業を展開。現在は、樹脂金型の設計・製造を行うIBUKIやAIシステムを開発するLIGHTzなどグループ4社を率いる製造業特化型のコンサルティング・ファームへと成長。

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